株式会社エヌケービーさまがオペレーションを担当されている、西武鉄道株式会社さまの全席レストラン車両観光列車、西武 旅するレストラン「52席の至福」(以下、「52席の至福」)で提供される、台湾の団体客向けオリエンタルヴィーガン対応のコース料理をマトイルで提供させていただきました。
西武 旅するレストラン「52席の至福」の詳細はこちら
https://www.seiburailway.jp/railways/seibu52-shifuku/ご相談内容
「52席の至福」は台湾からのお客さまが多く、これまでもオリエンタルヴィーガン対応をしてこられましたが、厨房設備が限られる中でのオペレーションが難しく、シェフ監修の通常メニューとの提供クオリティの差が生じてしまうことに課題を抱えていらっしゃいました。ご提供されているオリエンタルヴィーガン料理は、五葷(ごくん)と呼ばれるネギやニンニク、ニラ、らっきょう、アサツキなどの香りの強い野菜を避ける料理で、一般的なヴィーガン料理よりも使用できる食材が限られていることが特徴です。
- 〈お困りごと〉
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- 現在用意している特別対応メニューはクオリティの観点から改良が必要と感じている
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- 個人ごとに異なる特別対応メニューの準備をもっとスムーズに進めたい
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- 特別対応メニューの対応をするスタッフが限られるため、誰でも対応できるようにしたい
対応したこと
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- 地域の食材利用や冷菜を避けるなど台湾の食文化に合わせたメニューのご提案
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- 列車内の厨房設備に合わせた調理方法と商品形態のご提案
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- オリエンタルヴィーガン対応のコース料理一式のご提供
導入背景や商品ご提供までのやりとり、導入後の変化などを、ご担当の株式会社エヌケービー登川さまに伺いました。

コミュニティ・プラットフォーム事業室
エンターテイメント事業推進チーム 登川亮二さま
— 本日はお時間いただきまして、ありがとうございます。早速ですが、はじめにエヌケービーさんと登川さんのことを教えていただけますか。
私たち株式会社エヌケービーは、西武鉄道さまが運営する観光列車「52席の至福」の業務委託を受けており、列車内でコース形式のお食事を提供しています。「52席の至福」は、池袋または西武新宿~西武秩父間を結ぶ観光列車で、車窓からの景色の移ろいを楽しみながら、著名シェフが監修する、季節の美味しい料理を味わうことができます。メニューは3ヶ月ごとに変わり、私は監修メニューのディレクションで著名シェフとのやりとりを担当し、列車内のキッチンスタッフとして現場のオペレーションを回す役割も担っています。
— 登川さんはプロジェクト全体を統括されているだけでなく、特別対応メニューもご担当されていますよね。マトイルとは展示会での出会いがきっかけでしたが、当時は特別対応メニューに関してどのようなお悩みを感じられていたのでしょうか。
「52席の至福」には海外からのお客さまが多くいらっしゃいますので、以前からヴィーガンなど特別対応メニューのご要望は多くあります。特別対応メニューは、一部の素材を外部から調達していましたが、それ以外の部分は自社で準備する形になっていました。また、対応数が1、2人前であっても仕込みにかかる労力は通常の監修メニューと変わらないので、対応の負荷が課題で。そんなときに展示会でマトイルさんのブースにあった、ミールキットの写真が目に留まり、「もしかしたら一食まるごとお願いできるんじゃないか」と、期待に胸を膨らませました。


(株式会社エヌケービーさまご提供)

(株式会社エヌケービーさまご提供)


低温調理機、電子レンジ
水は飲用に使えない、火気厳禁などの制約あり
(株式会社エヌケービーさまご提供)

水は飲用に使えない、火気厳禁などの制約あり
(株式会社エヌケービーさまご提供)
— 今回提供させていただいたのは、台湾のお客さま向けの五葷(ごくん)と呼ばれる、ネギやニンニクなど香りのする野菜を使わないオリエンタルヴィーガンメニューですが、実際にマトイルの商品を導入されていかがでしたか。
ヴィーガン対応で困るのは、監修メニューとギャップが出てしまうことでした。「52席の至福」は、お料理を通して非日常を感じていただくことがコンセプトですが、特別対応メニューでは見た目の華やかさに欠けてしまっていて。マトイルさんに「52席の至福」に合わせて開発してもらった商品は、五葷対応でありながら色合いに華やさがあって、特別感を損ないません。しかも、湯煎で調理できるので、オペレーションも簡略化できました。それまでは私が付きっきりで対応する必要がありましたが、今はパッケージの表示や提供いただいた資料を見れば、誰にでも同じクオリティのものが提供できるようになっています。
一度マトイルさんのお店に試食に伺いましたが、その時にもメニュー構成や味付けがプロだな、と感じましたね。先日も台湾からツアーのお客さまがいらっしゃり、オリエンタルヴィーガンメニューを提供しましたが、すべて召し上がっていました。


(左) 前菜、(右) 狭山茶と秩父みそのティラミス
(株式会社エヌケービーさまご提供)

(株式会社エヌケービーさまご提供)
— お客さまの反応を伺えて、とても嬉しいです。マトイルのシェフは長くアレルギー対応をしてきているのですが、オリエンタルヴィーガンメニュー開発のお話をいただいた際、「チャレンジングなご相談だね」と意気込んでいました。
— メニュー開発にあたっては、登川さんから列車内で使用される器や秩父や沿線の食材などをご提供いただきながら、実際の提供方法を想定して試作を重ねてきましたが、進行のプロセスはいかがでしたか。
「52席の至福」は列車内という特殊な環境ですので、揺れなど通常のレストランとは異なる制約があります。また、池袋または西武新宿~西武秩父間を運行する列車ということもあり、秩父や沿線の食材を取り入れていただくなど、オリエンタルヴィーガンをはじめとするヴィーガン対応について悩んでいた1年前から、ここまで仕上げていただいたのには感謝しています。
それに、メニューに取り入れていただいた秩父や沿線の食材は「52席の至福」にとって、違いを出せる大切な要素です。通常の監修メニューでも地元の食材という地域活性にも繋がるメニュー構成にしていただいていて、監修いただくシェフにも、「地域には地域の食材があって、いい発見があった」とご感想をいただくことも多いので、オリエンタルヴィーガンメニューも同じように出来たのは、よかったなと思っています。例えば、デザートの「狭山茶のティラミス」は秩父で作られた味噌が入っていることから、召し上がられた際にはお客さまに驚かれますが、オリジナリティがあると喜んでいただいています。

— アレルギー対応食や代替食は味が薄かったり素朴になったりしてしまうことが多いですが、地元食材という宿題をいただけたおかげで、味がはっきりしたものが生まれたのは発見でした。現場のオペレーション環境も想像できない部分が多いので、フィードバックをいただけたおかげで、ご利用いただくレベルまで仕上げられたと感じています。
商品開発を通して、何度かサンプルのやりとりをさせていただきましたが、最終バージョンを受け取ったときには、ずっと課題に感じていた「特別対応における小口発注、在庫、調理などの難しいオペレーションからやっと解放される!」と唸りました。
— 最後に、今後マトイルでこんなことがあったらいいなと思うことを教えていただけますか。
列車内でのアレルギー対応に課題を感じています。今はアレルギーを申告いただいてもどうしても除去できないメニューがある場合には、お連れさまに召し上がっていただくなどの対応になってしまうこともあります。すべてに個別対応するのはオペレーション的に難しいですし、監修メニューを召し上がっていただくというコンセプトとも離れてしまいます。ただ、実際にアレルギー対応のご要望は少なくないですし、対応できれば「52席の至福」として魅力がより高まると思っています。例えば、監修シェフとやりとりする上でのメニュー構成や代替品の提案方法などをサポートいただけたら嬉しいですし、米粉パンなどの単品からでも導入してみてもよいかもしれません。マトイルさんは単品もそうですが、一食まるごと提案できるのが強みだと思っています。
— ぜひまたマトイルがお役に立てることがあればいつでもご相談ください!本日はどうもありがとうございました。

マトイルの裏エピソード
ご相談をいただいてから、オリエンタルヴィーガンの方に喜んでいただけるメニューって何だろう?と、あれこれ考えました。考えすぎて一体オリエンタルヴィーガンって何なんだ?!と悩み始め、たまたま知人にヴィーガンの方がいらっしゃったのでインタビューをしました。どんなものが食べたいと思う?これは食べたいと思う?などたくさん質問をして、最終的にはミドリムシを使った料理ってどう思う?という話にまで至るほど。試作をして、味に納得がいかないときは、ヴィーガン対応のコース料理を提供するお店に行ったこともありました。どんな料理が喜んでいただけるのか、とことんヴィーガンに向き合った開発期間でした。ちなみに、ミドリムシに関しては、インタビューさせていただいた方は生き物かどうかというよりも、気持ち的に別に食べてみたいとは思わないということでした。